改正の概要

旅館業法には最低客室数という基準があり、ホテルの許可ならば最低でも客室数が10室以上ある必要があり、旅館の許可ならば最低5室以上ある必要がありました。
そのため、大きなビルならホテルにできますが、小さいビルや戸建ての場合は旅館をする場合は室数が足りないので営業することが面積の問題でも難しかったのが現状でした。
しかし、2018年の旅館業法の改正により、ホテル営業及び旅館営業を統合し、営業種別として新しく旅館・ホテル営業が設けられることから、旅館・ホテル営業の施設の構造設備の基準などを定める旅館業法施行令や衛生管理要綱も改正され、これにより最低客室数や玄関帳場の設置などの構造設備要件が撤廃や緩和となりました。

構造設備基準改正内容
最低客室数ホテル営業:10室、旅館営業:5室の基準が廃止され1室からの営業が可能になりました。
玄関帳場
(フロント)
厚生労働省令で定める基準を満たす設備(映像などによる顔認証による本人確認機能等のICT設備を想定)を、玄関帳場等に代替する機能を有する設備として認められることになりました。
※但し、東京23区においては、区ごとの条例により異なります。
洋室の構造設備の要件の廃止  洋室の構造設備の要件(寝具は洋式であること、出入口・窓に鍵をかけることができること、客室と他の客室等との境が壁造りであること)を廃止することになりました。
便所数値による規制は廃止となり、適当な数の便所を有すればよいことになりました。

平成29年12月15日に改正旅館業法施行され、次のような項目が変更されました。

改正の概要

1.ホテル営業及び旅館営業の営業種別の旅館・ホテル営業への統合
ホテル営業及び旅館営業の営業種別を統合し、旅館・ホテル営業とする。
2.違法な民泊サービスの広がり等を踏まえた無許可営業者等に対する規制の強化
(1) 無許可営業者に対する都道府県知事等による報告徴収及び立入検査等の権限規定の措置を講ずる。
(2) 無許可営業者等に対する罰金の上限額を3万円から100万円に、その他旅館業法に違反した者に対する
罰金の上限額を2万円から50万円に引き上げる。
3.その他所要の措置
旅館業の欠格要件に暴力団排除規定等を追加

令和5年12月13日に改正旅館業法施行され、次のような項目が変更されました。
今回の旅館業法改正は、旅館・ホテル側にとっては「宿泊拒否ができるケースが明確になった」ことで大きな意味を持ちます。

  1. 宿泊拒否は原則禁止」というルールを明確化
  2. 旅館業の営業譲渡明記
  3. 宿泊者名簿の記載事項の変更

(1)宿泊拒否は原則禁止」というルールを明確化

旅館業法は、原則として「宿泊拒否は禁止、例外的に宿泊拒否してよい場合もある」というルールになっています。ただ、「宿泊拒否していい例外的とはどういう場合かが不明確となっており、実際に宿泊拒否に踏み切るかどうか頭を悩ませる旅館・ホテルが多くありました。

今回の改正では、そのカスタマーハラスメントに当たる特定の要を行った者の宿泊を拒むことができることとされました。

厚生労働省のホームページ「令和5年12月13日から旅館業法が変わります!」

(2)感染防止対策の充実

定感染症※が国内で発生している期間に限り、旅館業の営業者は宿泊者に対し、その症状の有無等に応じて、特定感染症の感染防止に必要な協力を求めることができることとされました。
※特定感染症
感染症法における一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症
(入院等の規定が準用されるものに限る)及び新感染症。
※新型コロナウイルス感染症は、令和5年5月8日をもって五類感染症に移行しているため、旅館業法における特定感染症には該当しません。
宿泊者名簿の記載事項として「連絡先」が追加され、「職業」が削除されました。 

(3)差別防止の更なる徹底

営業者は、特定感染症のまん延防止対策の適切な実施や特に配慮を要する宿泊者への
適切な宿泊サービスの提供のため、従業者に対して必要な研修の機会を与えるよう努め
なければならないこととされました。

営業者は、旅館業の公共性を踏まえ、かつ、宿泊しようとする者の状況等に配慮して、
みだりに宿泊を拒むことがないようにするとともに、宿泊を拒む場合には、宿泊拒否事由のいずれかに該当するかどうかを客観的な事実に基づいて判断し、及び宿泊しようとする者からの求めに応じてその理由を丁寧に説明することができるようにすることとされました。

(4)事業譲渡に係る手続きの整備

事業譲渡について、事業を譲り受ける者は、承継手続きを行うことで、新たな許可の取得を行うことなく、営業者の地位を承継することとされました。

カスタマーハラスメントへの対応

旅行や出張の際に、宿泊先で気持ちよく過ごすには、ホテルや旅館のおもてなしや私たちの過ごし方が重要です。ホテルや旅館などの健全な発達を図るとともに、施設の衛生水準を保ち、国民生活を向上させるために「旅館業法」という法律があります。令和5年に、この旅館業法が改正され、ホテルや旅館の営業者は、カスタマーハラスメントに当たる特定の要求を行った人の宿泊を拒むことができるようになりました。
日本のホテルや旅館は「おもてなし」文化の象徴とされるものですが、理不尽な要求を繰り返すカスタマーハラスメントに当たる行為は許されるものではありません。
宿泊サービスに従事する従業員に対して行う次のような行為は、新たな宿泊拒否事由に該当するとして、営業者はそれらの行為をする者の宿泊を拒むことができるようになりました。

① 宿泊しようとする者が、宿泊サービスに従事する従業員に対し、宿泊料の不当な割引や不当な慰謝料、不当な部屋のアップグレード、不当なレイトチェックアウト、不当なアーリーチェックイン、契約にない送迎など、他の宿泊者に対するサービスと比較して過剰なサービスを行うよう繰り返し求める行為
② 宿泊しようとする者が、宿泊サービスに従事する従業員に対し、自身の泊まる部屋の上下左右の部屋に宿泊客を入れないことを繰り返し求める行為
③ 宿泊しようとする者が、宿泊サービスに従事する従業員に対し、特定の者にのみ自身の応対をさせることや、特定の者を出勤させないことを繰り返し求める行為
④ 宿泊しようとする者が、宿泊サービスに従事する従業員に対し、土下座などの社会的相当性を欠く方法による謝罪を繰り返し求める行為
⑤ 泥酔し、他の宿泊者に迷惑を及ぼすおそれがある宿泊者が、宿泊サービスに従事する従業員に対し、長時間にわたる介抱を繰り返し求める行為
⑥ 宿泊サービスに従事する従業員に対し、対面や電話、メールなどにより、長時間にわたって、又は叱責しながら、不当な要求を繰り返し行う行為
⑦ 宿泊サービスに従事する従業員に対し、要求する内容には正当性があるが、暴力や暴言など、要求方法に問題があるものを繰り返し行う行為
※身体的な攻撃(暴行、傷害)、精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)、土下座の要求など

営業者が上記に該当する要求を求められ、応じられない場合は、まずは「そうした要求には応じられないが、宿泊自体は受け入れること」を説明し、それでもなお同じ要求を求められる場合は、宿泊を拒むことができるとされています。

一方で、次の事例は、新たな宿泊拒否事由には該当しません。

新たな宿泊拒否事由に該当しない具体例

① 障害のあるかたが社会の中にある障壁(バリア)の除去を求めること(「合理的配慮」の提供を求めることを含む。)。
例えば、「合理的な配慮」の求めに当たると考えられるものとして、次のものが挙げられます。
聴覚障害者への緊急時の連絡方法としてスマートフォン(又はフードコートなどで普及している「振動呼出し機」)の利用やフロント近くの客室の用意を求めること。
フロントなどで筆談でのコミュニケーションを求めること。
視覚障害者の部屋までの誘導を求めること。
車椅子で部屋に入れるようにベッドやテーブルの位置を移動することを求めること。
車椅子利用者がベッドに移動する際に介助を求めること。
車椅子利用者が高いところの物を従業員に代わりに取ってもらうよう求めること。
精神障害のある者がエレベーターや階段などの人の出入りがあるエリアから離れた静穏な環境の部屋の提供を求めること。
発達障害のある者が待合スペースを含む空調や音響などについての通常設定の変更を求めること。
② 医療的な介助が必要な障害者、車椅子利用者などが宿泊を求めること。
③ 介護者や身体障害者補助犬の同伴を求めること。
④ 障害者が障害を理由とした不当な差別的取扱いを受けたことについて、謝罪などを求めること。
⑤ 障害の特性により、場に応じた声の音量の調整ができないまま従業員に声をかけるなど、その行為が障害の特性によることを把握できる場合。
⑥ 営業者の故意・過失により損害を被り、何かしらの対応を求めること。(手段や態様が不相当なものを除く。)

厚労省hp令和5年12月13日から旅館業法が変わりました
厚労省hpカスタマーハラスメント対策企業マニュアル」等を作成しました
政府広報オンラインホテルや旅館に泊まる前に知っておきたい「旅館業法」改正のポイント

旅館業法施行令の規制緩和

2016年4月、簡易宿所の許可取得を取得しやすいように旅館業法の運用緩和(旅館業法施行令の一部改正、簡易宿所営業における玄関帳場に関する通知の見直し)を実施しました。

民泊新法

民泊新法とは、民泊の普及に向け政府が検討する新法のこと。2017年の通常国会への提出がされ法改正がおこなわれました。

特区民泊

特区民泊とは、国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例制度を活用した民泊のこと。東京都大田区では、2016年1月29日より、大阪府では2016年4月にスタート。2016年秋には大阪市でスタートしました。

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