旅館業許可の要件

旅館業を行うには、旅館業法に基づく旅館業営業許可を取得することが必要です。
旅館業法は、厚生労働省の都道府県知事を所管とする法律ですが、東京23区では、区ごとの条例や規則で構造設備や玄関帳場(フロント)の設備や常駐義務、駆けつけ要件などの基準などは異ります。
旅館業許可を受けるためには要件は、大きく分けると以下の3つの要件があると言えます。

  • 申請者の欠格要件に該当しないこと
  • 施設の場所の要件
  • 構造設備について

申請者の欠格要件とは

欠格要件とは

許可を受けようとする事業者(個人または法人)が以下に当てはまる場合は欠格事由にあたり許可を受けることができません。

① この法律又はこの法律に基く処分に違反して刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して三年を経過していない者
② 第八条の規定により許可を取り消され、取消の日から起算して三年を経過していない者
③ 法人であつて、その業務を行う役員のうちに前②号の1に該当する者があるもの
[旅館業法第3条]

施設の場所の要件

施設の場所の要件では、用途地域の指定があります。
旅館業の開業できる地域については、住居専用地域、工業地域、工業専用地域については旅館業の営業はできません。
その外、「学校等照会」により設置場所が以下の施設の周囲おおよそ110mの区域内にあり、その設置により該当施設の清純な施設環境が著しく害される恐れのある場合は許可はされません。主にラブホテルなどが対象とされています。

施設の設置場所が、下記の敷地の周囲約110mの区域内で、設置によりその清純な施設環境が著しく害されるおそれがある場合には、許可されません。
 ①学校教育法第1条に規程する学校(大学を除く)
幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校
②児童福祉法第7条に規定する児童福祉施設
助産施設、乳児院、母子生活支援施設、保育所、児童厚生施設、児童養護施設、知的障害児施設、知的障害児通園施設、盲ろうあ児施設、肢体不自由児施設、重症心身障害児施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設、児童家庭支援センター
 ③その他社会教育に関する施設で、都道府県の条例で定めるもの
図書館、公民館、都市公園、博物館、スポーツ施設など
 ※110メートルの区域内にある場合、許可が取得できないわけではなく、一定の設備を設ければ、営業が許可されます。

これらの施設管理者への意見を求める手続きが行われるので許可までの時間が延びてしまうことになります。

建築基準法の構造の規制が緩和されました

住宅として新築された建物を旅館業として使用したい場合はこの手続きが必要になり、その手続きを「建築確認申請」といいます。
この「建築確認申請」をする場合は一級建築士事務所に依頼することになり、高額な費用が必要になります。
建築確認申請をするには建物を新築した時に国が指定した検査機関が法律を守って建てられているか検査したことを証明する「検査済証」が必要になります。

ホテル・旅館などの宿泊施設は、建物の階数が3階以上の場合、高い耐火建築物にする必要があり、面積が100㎡を超える場合、用途変更のための建築確認の手続きが必要とされていました。
しかし今回の改正で用途変更に必要だった確認申請が「100㎡を超える建物」から「200㎡を超える建物」に変更されます。
その後、2018年6月に改正法案が施行され、以下のように変更されました。

1.延べ面積200㎡未満かつ3階建て以下の住宅を特殊建築物である旅館・簡易宿所へと用途変更する場合、在館者が迅速に避難できる措置を講じることを前提に、耐火建築物等とすることを不要とする。
2.用途変更する面積が200㎡以下の場合、建築確認申請手続きを不要とする。

構造設備について

次に、保健所で許可を受けるために必要な構造設備の基準は以下のようになります。

1.客 室

  1. 一客室の床面積は、7㎡(寝台を置く客室にあつては9㎡)以上であること。
  2. 面積算定は、内寸によって行う。
    1.客室床面積 
    宿泊者が利用しえる面積で、押入、床の間等は含まれないが、客室に附属する浴室、便所は含まれる。
    2.客室有効面積
    有効面積は寝室その他の宿泊者の睡眠、休憩等の用に供する部分の床面積を合計することにより算定する。

2.定 員

  1. 1客室の有効面積3㎡について、1名とすること

3.玄関帳場(フロント)

  1. 宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他当該者の確認を適切に行うための設備として厚生労働省令で定める基準に適合するものを有すること。
  2. 2018年6月15日に改正された旅館業法で、フロントスタッフを常駐させない形での無人施設運営に関しては、ICT機器でフロントの代用ができる環境があれば無人運営が出来るようになりました。

4.寝 具

  1. 宿泊者を宿泊させるために十分な数量の寝具類を有すること。

5.採光・照明

  1. 適当な採光、照明の設備を有すること

6.換 気

  1. 適当な換気設備を有すること

7.便 所

  1. 適当な数の便所の設備を有すること
  2. 便所内に換気扇を有すること

8.浴 室

  1. 宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の入浴設備を有すること。
  2. 共同の浴室またはシャワー室を設ける場合には、宿泊定員及び利用形態等を勘案し、十分な広さの脱衣室を付設すること

9.洗面設備

  1. 適当な規模の洗面設備を有すること
  2. 共同洗面所を設ける場合には、規則で定める数の給水栓を設置すること

10.その他

  1. その他都道府県が条例で定める構造設備の基準に適合すること

玄関帳場について

東京都では、区ごとに条例により異なりますが、以下の条件に適合すれば施設外に玄関帳場に代替する設備としてビデオカメラによる顔認証での本人確認のICT設備が認められることになりました。

玄関帳場の設備用件

◯宿泊施設には、鍵や電話機、ビデオカメラなどのICT設備を設置します。
◯施設外には、同等の設備を設けて施設まで徒歩で10分以内に到着出来る場所と管理者が必要になります。

旅館業法の改正のポイント

厚労省の主な改正内容とは

厚労省の構造設備基準は主な改正内容です
改正旅館業法により、ホテル営業及び旅館営業を統合し、新しく旅館・ホテル営業が設けられることから、旅館・ホテル営業の施設の構造設備の基準などを定める旅館業法施行令や衛生管理要綱も改正されました。

【厚労省】旅館業における衛生等管理要領の改正

旅館業法施工令の改正ポイント

  • 最低客室数の廃止
    ホテル営業は最低10室、旅館営業は最低5室の基準の廃止
  • 構造設備の基準
    出入口、窓への施錠が可能なこと、客室と他の客室等の境が壁造りであることの廃止
  • 1客室の最低床面積
    ホテル営業は最低9㎡以上の緩和
  • 玄関帳場の基準の緩和
    多くの23区でフロント(玄関帳場)等に代替えする機能を有する設備として、ビデオカメラによる顔認証による本人確認機能等のICT設備が認められることとなりました。
  • トイレ設備の基準

消防法に関すること

  • 自動火災報知設備・誘導灯・非常灯
  • 旅館業の構造設備等が、基準に適合しているかを確認するため、申請場所・構造設備の平面図などを持参のうえ事前に消防署に相談にいきます。

建築基準法に関すること

建築基準法とは、建物を建築するうえで最も基本となる法律で、建物の用途で建築基準が緩やかな「一般建築物」と、厳しい建築基準が課される「特殊建築物」に大別されます。ホテル・旅館業では「特殊建築物」の扱いになります。
建築物を旅館営業の用途で使用する場合は建築確認申請が必要な場合があります。
ホテルや旅館などの宿泊施設は火災から宿泊客の安全を確保するため、「防火対象物」として指定されており、消防用設備などの設置、防火管理の実施など防火安全対策を守ることが義務づけられています。
旅館営業を始めるには、消防署へ防火対象物使用開始届出書の提出も必要となりますので、施設を管轄する消防署の予防課に書類を提出します。
旅館業法上の営業種別のうち、旅館・ホテル営業や簡易宿所営業の許可取得を行った施設は、消防法上は消防法施行令第一5項(イ)に掲げる「ホテル、宿泊所その他これらに類するもの」に分類され、一般的なマンションよりも厳しい消防基準が適用されることになります。

消防法施行令別表第1 

5項(イ) 旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの
5項(ロ)寄宿舎、下宿または共同住宅

許可申請にあたっては、原則として許可申請書、営業施設の図面、その他自治体が条例などで定めた書類の提出と手数料が必要となります。申請書類は自治体によっても異なりますが、東京都の例では、下記が必要となります。

  • 旅館業営業許可申請書
  • 建物設備の概要書
  • 近隣の見取図(半径300メートル以内の住宅、道路、学校などが記載されたもの)
  • 配置図、各階平面図、正面図、側面図
  • 給排水配管図、照明図など
  • 建物の立面図
  • 申告書(旅館業法第3条第2項に該当することの有無)
  • 登記事項証明書、定款の写し(法人の場合)
  • 申請手数料

お電話はこちらから

永井行政書士事務所

参考記事

旅館業営業で必要な消防設備とは

民泊サービスを行う3つの方法

旅館業運営における外国人観光旅客の対応

火災報知設備の特例が可能になりました

保健所           所在地                    電話番号         
千代田区:千代田保健所
生活衛生課環境衛生係  
         
千代田区九段南1-6‐17
千代田会館8階
03-5211-8168
中央区:中央区保健所
生活衛生課
中央区明石町12‐103-3541-5936
港区:みなと保健所
生活衛生課住宅宿泊事業担当 
               
港区三田1‐4‐1003-6400-0088
新宿区:新宿区保健所
衛生課環境衛生係
新宿区新宿5-18-21
新宿区役所第二分庁舎
03-5273-3870
文京区:文京保健所
アカデミー推進課観光担当
                  
文京区春日1‐16‐2103-5803-1174
台東区:台東保健所
生活衛生課住宅宿泊事業担当
台東区東上野4‐22‐803-3847-9403
墨田区:墨田区保健所
生活衛生課生活環境係
墨田区吾妻橋1‐23‐2003-5608-6939
江東区:江東区保健所
生活衛生課環境衛生係
江東区東陽2-1‐103-3647-5862
品川区:品川区保健所
生活衛生課 環境衛生担当
品川区広町2‐1-3603-5742-9138
目黒区:目黒区保健所
健康推進部生活衛生課
目黒区上目黒2‐19‐1503-5722-9502
大田区:大田区保健所
健康政策部生活衛生課
大田区大森西1‐12‐1
大森地域庁舎
03-5764-0693
世田谷区:世田谷保健所
生活保健課環境衛生施設係
世田谷区世田谷4‐22‐3503-5432-2904
渋谷区:渋谷区保健所
生活衛生課内コールセンター
渋谷区宇田川町1‐103-3463-1211
中野区:中野区保健所
環境部 生活環境分野
中野区中野2‐17‐403-3382-6663
杉並区:杉並保健所
生活衛生課
 
杉並区荻窪5‐20‐103-3391-1991
豊島区:池袋保健所
保健福祉部生活衛生課
 
豊島区東池袋4‐42-16
池袋保健所 2 階
03-3987-4175            
北区:北区保健所
生活衛生課 (環境衛生)
北区東十条2-7-303-3919-0720
荒川区:荒川区保健所
生活衛生課環境衛生係
荒川区荒川2‐11-103-3802-3111
内線426
板橋区:板橋区保健所
生活衛生課
板橋区大山東町32-1503-3579-2335
練馬区:練馬区保健所
生活衛生課環境衛生監視担当係
練馬区豊玉北6‐12‐103-5984-2485
足立区:足立保健所
生活衛生課
 
足立区中央本町1‐5‐303-3880-5374
葛飾区:葛飾区保健所
生活衛生課
葛飾区青戸4‐15-1403-3602-1242
江戸川区:江戸川保健所
生活衛生課環境衛生係
江戸川区東小岩3‐23‐303-3658-3177

業務手数料

※ 当事務所で、客室、浴室、トイレなどの測量から正確なCADによる図面を作成しています。
※ 案件の規模や難易度等に応じて金額が変わりますので、ご相談いただいた後にお見積りを致します。
※ 保健所:旅館業許可手数料 22.000円

  サポート内容  報酬額
旅館業営業許可申請書類(保健所)
旅館業営業許可申請書類
160.000円(税込)
図面作成(建物配置図・各階平面図・正面図・側面図など90.000円(税込)
※規模により増減致します。      
事前相談や調査など
※旅館業の許可申請に必要となる事項の事前調査や、行政への事前相談を行います。
40.000円(税込)


主な営業地域

東京都内:千代田区(秋葉原、神田、有楽町、岩本町、小川町、末広町、三崎町、市ヶ谷、飯田橋、九段、神保町、淡路町)、港区(新橋、西新橋、芝、浜松町、西麻布、六本木、赤坂、北青山、麻布十番)中央区(銀座、八重洲、茅場町、新富町、築地、日本橋、月島、京橋、宝町、小伝馬町)、文京区(湯島、大塚、駒込、本郷)台東区(上野、秋葉原、浅草、雷門、浅草橋、入谷、三ノ輪、蔵前、池之端)、新宿区(信濃町、高田馬場、歌舞伎町、新宿、四谷、市ヶ谷、神楽坂、大久保、百人町)豊島区(池袋、駒込、巣鴨、大塚、目白)、中野区(中野、新井、江古田、東中野、落合、方南町、沼袋、中野坂上)、目黒区(目黒、祐天寺、自由が丘)墨田区(錦糸町、江東橋、石原、業平、太平、横川、八広、曳舟、押上、本所吾妻橋、とうきょうスカイツリー)、葛飾区(新小岩、金町、堀切菖蒲園、お花茶屋、亀有、高砂、立石、柴又、青戸、四ツ木)、江戸川区(小岩、平井、船堀、中央、瑞江、一之江、篠崎、葛西、西葛西)、江東区(亀戸、門前仲町、東陽町、森下、住吉、大島、南砂町、木場)、渋谷区(宇田川町、恵比寿、原宿、代々木)、品川区(五反田、品川、新馬場、西新井、大井町、目黒、大崎)、大田区(蒲田、大森、池上、久が原、田園調布)、荒川区(日暮里、町屋、三ノ輪、南千住)、足立区(北千住、竹の塚、西新井、牛田、梅島、北綾瀬、堀切、小菅、五反野、関谷)、北区(赤羽、王子、田畑、尾久、十条、上中里、西巣鴨)、杉並区(阿佐ヶ谷、堀ノ内、西荻窪、浜田山)、板橋区(板橋本町、蓮根、成増、志村坂上、大山)、世田谷区(世田谷、九品仏、豪徳寺、三軒茶屋、梅が丘、下北沢)など