旅館業の改正の概要
構造設備基準が緩和
訪日外国人客(インバウンド)の増加により、近年ではホテル・旅館の不足が問題となって来ました。
以前は、旅館業法においてには、最低客室数という基準があり、ホテルの許可では最低でも客室数が10室以上、旅館の許可でば最低5室以上ある必要がありました。
そのため、大きなビルならホテルにできますが、小さいビルや戸建てなどで旅館をする場合は室数が足りないので営業することが面積の問題でも難しかったのが現状でした。
しかし、2018年の旅館業法の改正により、ホテル営業及び旅館営業を統合し、営業種別として新しく旅館・ホテル営業が設けられることから、旅館・ホテル営業の施設の構造設備の基準などを定める旅館業法施行令や衛生管理要綱も改正され、これにより最低客室数や玄関帳場の設置などの構造設備要件が撤廃や緩和となりました。
構造設備基準 | 改正内容 |
最低客室数 | ホテル営業:10室、旅館営業:5室の基準が廃止され1室からの営業が可能になりました。 |
玄関帳場 (フロント) | 厚生労働省令で定める基準を満たす設備(映像などによる顔認証による本人確認機能等のICT設備を想定)を、玄関帳場等に代替する機能を有する設備として認められることになりました。 ※東京23区では、区ごとの条例により異なります。 |
洋室の要件の廃止 | 洋室の構造設備の要件(寝具は洋式であること、出入口・窓に鍵をかけることができること、客室と他の客室等との境が壁造りであること)を廃止することになりました。 |
便 所 | 数値による規制は廃止となり、人数に応じて、数の便所を有すればよいことになりました。 |
玄関帳場、フロントの要件の変更 / 厚生労働省令で定める基準厚生労働省令で定める基準
宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他当該者の確認を行うための設備として厚生労働省令で定める基準に適合するものを有すること。
政令第1条第1項第2号の基準は、次のいずれにも該当すること。
⑴ 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応を可能とする設備を備えていること。
⑵ 宿泊者名簿の正確な記載、宿泊者との間の客室の鍵の適切な受渡し及び宿泊者以外の出入り状況の
確認を可能とする設備を備えていること。
宿泊者の利用しやすい位置に、規則で定める玄関帳場若しくはフロント又はこれに類する設備を設けること。
宿泊しようとする者との面接に適し、次に掲げる要件を全て満たす構造設備のものとする。
⑴ 営業施設入り口から容易に見えるよう宿泊者が通過する場所に位置していること。
⑵ 宿泊者の出入りを容易に見ることができる構造設備であること。
⑶ 受付等の事務に適した 広さを有していること。
⑷ 宿泊者又は周辺住民等の求めに応じて常時対応することができる機能を備えていること。
次のすべての要件を満たし、宿泊者の安全や利便性の確保ができている場合は、玄関帳場若しくはフロント又はこれに類する設備を備えているものとする。
1) 従業者が宿泊しようとする者の本人確認、受付を対面と同等の手段により行うこと。対面と同等の手段とは、営業者自らが営業施設に設置したビデオカメラ等から発信された鮮明な画像を用いて本人確認、受付を行うこと。
2) 宿泊しようとする者の本人確認、受付を実施した後に適切に客室の鍵を交付すること、かつ宿泊終えた者に適切に鍵を返却させること。ただし、無人の施設に設置したキーボックス等での鍵の受け渡しは行わないこと。
3) 営業者自らが営業施設に設置したビデオカメラ等から発信された鮮明な画像を用いて宿泊者の出入りの状況確認を行うこと。
4) 緊急時や宿泊者又は周辺住民等からの求めがあった時に常時迅速な対応が実施できる体制が整備れていること。常時迅速な対応が実施できる体制とは、次の要件を満たしていることをいう。
① 管理事務所等を設置し宿泊者又は周辺住民等の緊急を要する状況や求めがあった状況に対し、従業者が連絡を受けてから徒歩によって駆けつけ、対応にあたるまでを通常10分程度で行うことができ体制を想定していること。
② 営業施設と管理事務所等との間に通話機器を設置すること。
平成29年12月の旅館業法改正について
平成29年12月15日に改正旅館業法施行され、次のような項目が変更されました。
改正の概要
1.ホテル営業及び旅館営業の営業種別の旅館・ホテル営業への統合
ホテル営業及び旅館営業の営業種別を統合し、旅館・ホテル営業とする。
2.違法な民泊サービスの広がり等を踏まえた無許可営業者等に対する規制の強化
(1) 無許可営業者に対する都道府県知事等による報告徴収及び立入検査等の権限規定の措置を講ずる。
(2) 無許可営業者等に対する罰金の上限額を3万円から100万円に、その他旅館業法に違反した者に対する
罰金の上限額を2万円から50万円に引き上げる。
3.その他所要の措置
旅館業の欠格要件に暴力団排除規定等を追加
令和5年の旅館業法改正について
令和5年12月13日に改正旅館業法施行され、次のような項目が変更されました。
今回の旅館業法改正は、旅館・ホテル側にとっては「宿泊拒否ができるケースが明確になった」ことで大きな意味を持ちます。
- 「宿泊拒否は原則禁止」というルールを明確化
- 旅館業の営業譲渡明記
- 宿泊者名簿の記載事項の変更
(1)宿泊拒否は原則禁止」というルールを明確化
旅館業法は、原則として「宿泊拒否は禁止、例外的に宿泊拒否してよい場合もある」というルールになっています。ただ、「宿泊拒否していい例外的とはどういう場合かが不明確となっており、実際に宿泊拒否に踏み切るかどうか頭を悩ませる旅館・ホテルが多くありました。
今回の改正では、そのカスタマーハラスメントに当たる特定の要を行った者の宿泊を拒むことができることとされました。
厚生労働省のホームページ「令和5年12月13日から旅館業法が変わります!」
(2)感染防止対策の充実
定感染症※が国内で発生している期間に限り、旅館業の営業者は宿泊者に対し、その症状の有無等に応じて、特定感染症の感染防止に必要な協力を求めることができることとされました。
※特定感染症
感染症法における一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症(入院等の規定が準用されるものに限る)及び新感染症。
※新型コロナウイルス感染症は、令和5年5月8日をもって五類感染症に移行しているため、旅館業法における特定感染症には該当しません。
宿泊者名簿の記載事項として「連絡先」が追加され、「職業」が削除されました。
(3)差別防止の更なる徹底
営業者は、特定感染症のまん延防止対策の適切な実施や特に配慮を要する宿泊者への適切な宿泊サービスの提供のため、従業者に対して必要な研修の機会を与えるよう努めなければならないこととされました。
営業者は、旅館業の公共性を踏まえ、かつ、宿泊しようとする者の状況等に配慮して、
みだりに宿泊を拒むことがないようにするとともに、宿泊を拒む場合には、宿泊拒否事由のいずれかに該当するかどうかを客観的な事実に基づいて判断し、及び宿泊しようとする者からの求めに応じてその理由を丁寧に説明することができるようにすることとされました。
(4)事業譲渡に係る手続きの整備
事業譲渡について、事業を譲り受ける者は、承継手続きを行うことで、新たな許可の取得を行うことなく、営業者の地位を承継することとされました。
カスタマーハラスメントへの対応
旅行や出張の際に、宿泊先で気持ちよく過ごすには、ホテルや旅館のおもてなしや私たちの過ごし方が重要です。ホテルや旅館などの健全な発達を図るとともに、施設の衛生水準を保ち、国民生活を向上させるために「旅館業法」という法律があります。令和5年に、この旅館業法が改正され、ホテルや旅館の営業者は、カスタマーハラスメントに当たる特定の要求を行った人の宿泊を拒むことができるようになりました。
日本のホテルや旅館は「おもてなし」文化の象徴とされるものですが、理不尽な要求を繰り返すカスタマーハラスメントに当たる行為は許されるものではありません。
宿泊サービスに従事する従業員に対して行う次のような行為は、新たな宿泊拒否事由に該当するとして、営業者はそれらの行為をする者の宿泊を拒むことができるようになりました。
新たな宿泊拒否事由に該当する具体例
① 宿泊しようとする者が、宿泊サービスに従事する従業員に対し、宿泊料の不当な割引や不当な慰謝料、不当な部屋のアップグレード、不当なレイトチェックアウト、不当なアーリーチェックイン、契約にない送迎など、他の宿泊者に対するサービスと比較して過剰なサービスを行うよう繰り返し求める行為 ② 宿泊しようとする者が、宿泊サービスに従事する従業員に対し、自身の泊まる部屋の上下左右の部屋に宿泊客を入れないことを繰り返し求める行為 ③ 宿泊しようとする者が、宿泊サービスに従事する従業員に対し、特定の者にのみ自身の応対をさせることや、特定の者を出勤させないことを繰り返し求める行為 ④ 宿泊しようとする者が、宿泊サービスに従事する従業員に対し、土下座などの社会的相当性を欠く方法による謝罪を繰り返し求める行為 ⑤ 泥酔し、他の宿泊者に迷惑を及ぼすおそれがある宿泊者が、宿泊サービスに従事する従業員に対し、長時間にわたる介抱を繰り返し求める行為 ⑥ 宿泊サービスに従事する従業員に対し、対面や電話、メールなどにより、長時間にわたって、又は叱責しながら、不当な要求を繰り返し行う行為 ⑦ 宿泊サービスに従事する従業員に対し、要求する内容には正当性があるが、暴力や暴言など、要求方法に問題があるものを繰り返し行う行為 ※身体的な攻撃(暴行、傷害)、精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)、土下座の要求など |
営業者が上記に該当する要求を求められ、応じられない場合は、まずは「そうした要求には応じられないが、宿泊自体は受け入れること」を説明し、それでもなお同じ要求を求められる場合は、宿泊を拒むことができるとされています。
一方で、次の事例は、新たな宿泊拒否事由には該当しません。
新たな宿泊拒否事由に該当しない具体例
① 障害のあるかたが社会の中にある障壁(バリア)の除去を求めること(「合理的配慮」の提供を求めることを含む。)。 例えば、「合理的な配慮」の求めに当たると考えられるものとして、次のものが挙げられます。 聴覚障害者への緊急時の連絡方法としてスマートフォン(又はフードコートなどで普及している「振動呼出し機」)の利用やフロント近くの客室の用意を求めること。 フロントなどで筆談でのコミュニケーションを求めること。 視覚障害者の部屋までの誘導を求めること。 車椅子で部屋に入れるようにベッドやテーブルの位置を移動することを求めること。 車椅子利用者がベッドに移動する際に介助を求めること。 車椅子利用者が高いところの物を従業員に代わりに取ってもらうよう求めること。 精神障害のある者がエレベーターや階段などの人の出入りがあるエリアから離れた静穏な環境の部屋の提供を求めること。 発達障害のある者が待合スペースを含む空調や音響などについての通常設定の変更を求めること。 ② 医療的な介助が必要な障害者、車椅子利用者などが宿泊を求めること。 ③ 介護者や身体障害者補助犬の同伴を求めること。 ④ 障害者が障害を理由とした不当な差別的取扱いを受けたことについて、謝罪などを求めること。 ⑤ 障害の特性により、場に応じた声の音量の調整ができないまま従業員に声をかけるなど、その行為が障害の特性によることを把握できる場合。 ⑥ 営業者の故意・過失により損害を被り、何かしらの対応を求めること。(手段や態様が不相当なものを除く。) |
詳しくは下記の厚労省hp、政府広報オンラインをご参照ください。
厚労省hp | 令和5年12月13日から旅館業法が変わりました |
厚労省hp | カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」等を作成しました |
政府広報オンライン | ホテルや旅館に泊まる前に知っておきたい「旅館業法」改正のポイント |
民泊の規制緩和
旅館業法施行令の規制緩和
2016年4月、簡易宿所の許可取得を取得しやすいように旅館業法の運用緩和(旅館業法施行令の一部改正、簡易宿所営業における玄関帳場に関する通知の見直し)を実施しました。
民泊新法
民泊新法とは、民泊の普及に向け政府が検討する新法のこと。2017年の通常国会への提出がされ法改正がおこなわれました。
特区民泊
特区民泊とは、国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例制度を活用した民泊のこと。東京都大田区では、2016年1月29日より、大阪府では2016年4月にスタート。2016年秋には大阪市でスタートしました。
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主な営業地域
東京都内:千代田区(秋葉原、神田、有楽町、岩本町、小川町、末広町、三崎町、市ヶ谷、飯田橋、九段、神保町、淡路町)、港区(新橋、西新橋、芝、浜松町、西麻布、六本木、赤坂、北青山、麻布十番)中央区(銀座、八重洲、茅場町、新富町、築地、日本橋、月島、京橋、宝町、小伝馬町)、文京区(湯島、大塚、駒込、本郷)台東区(上野、秋葉原、浅草、雷門、浅草橋、入谷、三ノ輪、蔵前、池之端)、新宿区(信濃町、高田馬場、歌舞伎町、新宿、四谷、市ヶ谷、神楽坂、大久保、百人町)豊島区(池袋、駒込、巣鴨、大塚、目白)、中野区(中野、新井、江古田、東中野、落合、方南町、沼袋、中野坂上)、目黒区(目黒、祐天寺、自由が丘)墨田区(錦糸町、江東橋、石原、業平、太平、横川、八広、曳舟、押上、本所吾妻橋、とうきょうスカイツリー)、葛飾区(新小岩、金町、堀切菖蒲園、お花茶屋、亀有、高砂、立石、柴又、青戸、四ツ木)、江戸川区(小岩、平井、船堀、中央、瑞江、一之江、篠崎、葛西、西葛西)、江東区(亀戸、門前仲町、東陽町、森下、住吉、大島、南砂町、木場)、渋谷区(宇田川町、恵比寿、原宿、代々木)、品川区(五反田、品川、新馬場、西新井、大井町、目黒、大崎)、大田区(蒲田、大森、池上、久が原、田園調布)、荒川区(日暮里、町屋、三ノ輪、南千住)、足立区(北千住、竹の塚、西新井、牛田、梅島、北綾瀬、堀切、小菅、五反野、関谷)、北区(赤羽、王子、田畑、尾久、十条、上中里、西巣鴨)、杉並区(阿佐ヶ谷、堀ノ内、西荻窪、浜田山)、板橋区(板橋本町、蓮根、成増、志村坂上、大山)、世田谷区(世田谷、九品仏、豪徳寺、三軒茶屋、梅が丘、下北沢)など
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